2009年11月10日

土になる

森林セラピーモニターツアーも10月18日に3回目の検査が終わり、いよいよ、その長期的効果を検証をすることになります。その報告を11月23日松原「森の学校」上で行います。関心のある方はぜひご参加ください。今回のテーマは「健康と森林」 講師は首都大学教授 星旦二先生。 報告は我が森に住むおいしゃさま 松原診療所 宜保美紀医師が行います。

今回のモニターツアーではご参加のみなさんから、私たち地元の者は多くのことを教えていただきました。これからの文は、参加いただいた丸本郁子さまが最後のミーティングでお話されたことを、ご本人に再現いただいたものです。ご本人の承諾をいただきご紹介いたします。
私たちのこれからの道を示唆いただいているように思えてなりません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   土になる

森林セラピーの二日目、久保谷風景林を歩いた。岩を包み込むように根をはる赤樫の大木、それに寄り添うように生えるというヒメシャラ、分厚い苔、そして想像以上にふんわりと弾力性がある地面・・・しかし前日より険しい登り坂もあり、足元のおぼつかない私は森の案内人に時々手を引いてもらいながら歩いた。
昼食後、しばらく好きなように過ごしてくださいと言われ、隣の男性が大の字になって寝転んでいるのを見て、真似をしてみることにした。大丈夫かなと、ちょっとビクビクしながら小枝を拾い土を掻いてみた。枯葉を除けると、そこには思いがけず黒々とした豊かで柔らかい土が現れた。寝転んでみるとふんわりと暖かい。目を閉じ耳を澄ます。静かなようでありながら何かの息吹を感じる。目を開いてみた。ずーっと、ずーっと上まで枝を延ばしている木々の幹、幾重にも重なる緑の木の葉、差し込んでくる陽の光を受けてきらめいているもの、蔭になりやわらかく目を守ってくれるかのように重なりあっているもの、そしてその先の高い高いところに青空があった。美しかった。木の幹が、緑の葉が、そしてそこからはるか彼方に見える空が、美しかった。長い間見つめていた。静かで平和だった。下から見ると世界はこんな風に見えるのか・・・、土はこうやって宇宙を見ているのだ・・・と始めて気がついた。人は死んで土にかえると言うけれど、それも悪くないな、と思えてきた。地面から見上げる地球はこんなに美しいのだもの。土になるとは、木々を支え、育み、葉を茂らせ、実を結ばせる、そして時が来ると落葉や倒木を受けとめ包みこみ、自分の一部へと組み込んでいくこと。寝転がって土に身を預け、森の空気に包まれていると、土になることが、とても自然で素敵なこと、少しも怖がることではない、と納得している自分がいた。とても暖かく安らかな気分だった。
その安らぎは大阪に帰ってきてからの日常生活の今にも続いている。生きていることがいとおしく、その先にある命の終わりの時をも穏やかに受け止められる自分がいる。

丸本 郁子
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